転職後になりやすい燃え尽き症候群とは?対策方法について

転職をしてすぐは心も体もハイになっている状態なのですが、少し仕事に落ち着きが出てきた数ヶ月後に陥りやすいのが燃え尽き症候群。

誰しもが経験する可能性のある症候群ですが、意外と気づきにくいのが厄介なところです。私自身も転職後同じような状況に陥りましたが1年経った今は気持ちは落ち着いています。

燃え尽き症候群とは?

バーンアウトシンドロームとも呼ばれ、アメリカの心理学者であるハーバートフロイデンバーガーによって初めて使われた言葉です。英語、バーンアウトという言葉はドラッグを使った時の「無力感」や「無気力感」を表す言葉ですが、燃え尽き症候群はまさにそのような状態に陥るため、同じ言葉が使われるようになりました。

どんな状態のことを指すか

燃え尽き症候群とは、何かに対して献身的に打ち込んだ後に、エネルギーを完全に使い切って、カラカラになってしまった状態を指します。ゲームで例えればMPが0に削られてしまった状態でしょうか? 思いっきり敵にぶつかっていった結果、MPを使い果たしてしまい、これ以上戦えないという状況。

そして燃え尽き症候群に陥ってしまった場合、一時的なうつ状態になったり、メンタルはもちろんのこと身体的にも、頭痛や肩こりといった体の不調に悩まされるケースもあります。今まで一生懸命に打ち込んできたのに急にやる気がなくなってしまう、もし思い当たる節があれば、それは燃え尽き症候群かもしれません。

燃え尽き症候群はどんな時になるのか

では、この燃え尽き症候群どんな時に陥ってしまうのでしょうか?ハーバートフロイデンバーガーによると、「自分が最善と思い打ち込んだ結果、思うような結果が得られなかった際にもたらされる状態」と定義されています。

ただこの定義は個人的には不完全だと思います。と言うのも、場合によっては努力が報われたにもかかわらず、同じような状態に陥ることがあるからです。つまり、頑張った結果、期待する結果が得られた事で一気に力が抜けてしまい、今までの様にエネルギーを注ぐ事ができなくなるケースもあるのです。

例えば、新卒で入社した会社で大きな仕事を任されたとき、がむしゃらに頑張って結果を出せたとしてもその直後に力が抜けてしまうというケースもあります。

仕事と燃え尽き症候群を二軸でみる

燃え尽き症候群。スポーツ選手が目標を達成した時などが例として挙げられますが、上記のように仕事が原因で燃え尽き症候群になってしまう事ももちろんあります。仕事における燃え尽き症候群は、活動水準と仕事への態度認知の二軸で見る事ができます。

下の表を見てみると、燃え尽き症候群と呼ばれるのは、左下の「バーンアウト」の位置に当たる事がわかります。つまり、活動水準が低く、そして仕事への態度や認知が不快に近い時に起こります。これがどういう事なのか、真反対に位置する「ワーク・エンゲイジメント」を見てみると、その違いがわかりやすいかもしれません。

ウィキペディアより

では燃え尽き症候群と真反対に位置している「ワーク・エンゲイジメント」とはどういう状態でしょうか?

「ワーク・エンゲイジメントは,仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる。エンゲイジメントは、特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である」

この説明の通りなのですが、仕事に対する「want」がある状態がこの「ワーク・エンゲイジメント」にあたり、反対に「want」という意思が抜け落ちてしまった状態で陥ってしまうのが「燃え尽き症候群」となります。

こう見ると、ワーク・エンゲイジメントと燃え尽き症候群の差が非常に大きい事がわかりますね。そして燃え尽き症候群の辛さもわかりやすいです。

こんな態度をとるようになったら要注意

燃え尽き症候群になった人によく見られる特徴があります。自覚症状がなくても、周りの人にこのような傾向があれば、もしかしたらその人は燃え尽き症候群の可能性があります。

  • 朝なかなかおきられない
  • お酒や嗜好品に逃げ口を求めてしまう
  • 今まで許せたことが許せなくなるーイライラして物に当たってしまう
  • 人と口を聞きたくなくなる
  • 挨拶をしなくなる
  • 新しいことを始めようという気がなくなる
  • やる気を見せなくなる
  • 感情を人に見せなくなる

燃え尽き症候群の段階

社会心理学者クリスティーナ・マスラークが考案したMBI:Maslach Burnout Inventoryによると、燃え尽き症候群は「情緒的消耗感」「脱人格化」「個人的達成感の低下」の3要素から見ることができます。

情緒的消耗感

情緒的なもの、例えば人に向き合う仕事などで感情を伴うサービスを求められる時など、その感情を消耗してしまう状態のことを指します。サービス提供者に対して強く共感したり、感情移入をすることで自分の感情エネルギーをすり減らしてしまうことで、消耗感を感じてしまう状態です。他の「脱人格化」や「個人的達成感の低下」は、この情緒的消耗感の結果起こるとされていおり、そのためこの情緒的消耗感が燃え尽き症候群の主症状と考えられています。

脱人格化

上記のように、感情を消耗してしまった場合に起こる状態を脱人格化と呼びます。どういうことかというと、サービスの受け手に対する態度が人格を失ったようになってしまう状態です。看護職であれば相手の名前を呼ばなくなる、笑顔を見せなくなる、感情的なケアを避けるようになるなど、いわゆるマニュアル的で機械的な受け答えをすることで、一定の距離をあけるようになる状態です。

個人的達成感の低下

そのまま、達成感を感じられない状態のことです。活動力も下がるので、同時に成果も落ちることになり達成感を感じられなくなってしまうのです。

燃え尽き症候群になる人とならない人の差は?

同じ状況にあったとしても、燃え尽き症候群になる人、ならない人がいます。その差はいったいどこにあるのでしょうか?

1.) 特にヒューマンサービス従事者に多い燃え尽き症候群

上記のMBIを見てわかるように、特にヒューマンサービスに従事する人に多く見られるのが燃え尽き症候群です。この燃え尽き症候群という言葉を初めて使ったハーバートフロイデンバーガーが、この症候群を定義したのも、まさに彼がヒューマンサービス従事者として保護施設に勤務していた時なのです。彼がこの「燃え尽き症候群」の研究を始めたのは、同じ保護施設に勤務する同僚が突然の無気力を訴えるのを目撃した事が発端と言われています。

ヒューマンサービス従事者に求められる「ひたむきさ」

ヒューマンサービスには、介護・看護・教育などがあげられます。またはサービス業と言われる業種も、人にコミットするという意味では、その本質はヒューマンサービスである場合もあります。近年の日本では、こうしたヒューマンサービスの需要が高まっています。

人に関わるヒューマンサービスですが、特に「ひたむきさ」が求められるシーンが多く見られます。ただその性質が仇となってしまうケースもあるのです。人と向き合い信頼関係を構築する為には多大な労力を要します。一方でサービス需要者は増えていき、サービス提供者への負担が増える中、人との関わり合いの中で精神を消耗することで燃え尽き症候群担ってしまうケースが多々あるのです。

同じ状況でも燃え尽き症候群にならない人は「マニュアル的」作業が出来る人

先に伝えたいのは「マニュアル的」作業が出来る人を批判するつもりは全くないということです。ここではあえて「正しい・正しくない」ではなく、どのような特徴が燃え尽き症候群になりやすいかという点に着目すると、おなじヒューマンサービスに従事する人でも「マニュアル的な作業が出来る人」というのは燃え尽き症候群に陥りにくいという事が研究でわかっています。

2.) 若い人ほど陥りやすい

また研究によると、燃え尽き症候群は若い人ほど陥りやすいことが判明しています。原因として考えられるのは、若い人ほど仕事に対する経験が浅く「現実」と「理想」のギャップが大きいこと。

新入社員も、入社前に抱いていた理想と現実のギャップが見えてしまった時に、この燃え尽き症候群の状態になってしまうことが多くあります。
さらに言えばそうしたストレス状態に対する耐性は「経験」の長さによって培われることも多く、若ければ若いほどギャップに対して過剰に反応してしまうケースが多いのです。

3.) 役割の葛藤を感じるほど陥りやすい

例えば先生という職業。場合によっては生徒の理解者として感情的に向き合う必要がありますが、同時に管理者という立場で生徒を指導する必要もあります。このように役割の葛藤が多い仕事ほど燃え尽き症候群に陥りやすいと言われています。

自分が燃え尽き症候群か知る方法

こちらのページでは日本版バーンアウト尺度(久保,1998)を元に、自分の燃え尽き症候群の尺度が図れる表が掲載されています。ご自身がどの程度「燃え尽き症候群」のリスクを負っているのか、こちらで確認してみると良いでしょう。

チェックリスト

燃え尽き症候群にならない為に

では実際にどのような対策をすれば燃え尽き症候群になるリスクを減らすことが出来るのでしょうか?

燃え尽き症候群になりにくい環境を作る

まずは燃え尽き症候群になりにく環境を作ることが大切です。これまで書いてきたように、燃え尽き症候群は環境によっても陥りやすさが変わるものです。ではどのような環境を作るのが良いのでしょうか?それは、限定された目標があり、達成感を得られる環境です。

限定された目標とは

日本労働研究雑誌の論文で、託児所改革の例が挙げられ「管理のない自由」と「自律性」について解説がされています。一見すると自由というのは、自分の意志で色々と決定が出来る良い環境にも思えますが、一方で仕事の出来る人に負担が偏る、またどこまでのサービスを提供するべきか限定されておらず「目標」不明確な状態でもあります。

この例の託児所では、勤務時間だけが決まっており、その間の子供との関わり方や指導の仕方は完全に個人の裁量に任されていました。しかし管理されていない状況のもと、個々の役割が不明確になり、達成感が得られにくくなっていました。

そこで、改善策として、どのスタッフがどの子供の面倒をみるか、そして個々の役割の範囲を明確にし、責任の範囲を決めたところスタッフのストレスが減り、燃え尽き症候群の根本原因である情緒感の消耗が著しく減ったとのこと。このように個々の役割の明確化を行うことで、仕事量の偏りを防ぎ、限定した達成感を得やすい環境を作るのは良い対策と言えます。

「突き放した関心」を持つこと

こちらも専門用語ですが、「突き放した関心」とは相手に共感しつつも、ある一定の距離感を保つことを指します。特に燃え尽き症候群に陥りやすい人に、相手に心からの共感を示し情緒的サポートを提供することを厭わない傾向があります。

一方で「突き放した関心」というのは、共感を持ちつつも「役割」をしっかりと認識しており、双方のバランスをうまくとっている状態です。サービス提供者に対して入れ込みすぎてしまい、第三者的な正しい判断ができなくなる状態というのは、感情エネルギーの消耗が激しく、理想の結果が得られない場合「燃え尽き症候群」になりやすいと言えます。日本人的に表現すれば「つかずはなれず」のバランスを持つことが大切です。

燃え尽き症候群になってしまったら

実は燃え尽き症候群になった後の有効な回復手段については研究が十分になされていない状況です。どのような場合に「燃え尽き症候群」になってしまうか、よく知っておくことで症状を未然に防ぐことはもちろん、一度陥ってしまった場合どのように回復すれば良いかも知りたいですよね。

まずは燃え尽き症候群になってしまったことを認める

燃え尽き症候群にかかわらず、あらゆる病気や症候群は、自身で自分の症状を正確に把握するのはとても難しいことです。なので周囲の人がその変化に敏感になることが重要です。もしご自身で自分の状態が「燃え尽き症候群」に近いと感じた場合、目を背けるのではなく、一度認めてしまうのが得策です。その自覚があればこそ回復への道が見つかる可能性が高くなります。

その状況から距離を置く

働いている人には難しいことだと思います。とくに燃え尽き症候群に陥る人は「責任感をしっかり持っていて、ひたむきに仕事に取り組む」性質を持っており、そのため今自分がするべき仕事を放り出して距離を置くのには抵抗があるかもしれません。

しかし、良い仕事をするためには「自分の状態を健やかに保つ」というのもとても重要なことなのです。そのためにしっかりと仕事と距離を置く、可能であればお休みをもらう。難しければ仕事の範囲を狭くする、または全く違う「マニュアル」がしっかりしている仕事に変えてもらう。いろいろな方法があると思うので自分にあった、無理のない方法で、自分の「エネルギーのチャージ」をしっかりとするようにしましょう。

周りに自身の状態をうまく説明するのは難しいかもしれません。しかし「燃え尽き症候群」については、世間にもよく知れ渡っているので、理解を得やすい状態でもあります。管理職の人であれば従業員のそういった「変化」をしっかりと理解し、より良い環境を提供する義務があると私は思います。勇気を出して相談することも一つの手だと思いますよ。

まとめ

燃え尽き症候群はどんな人でもなる可能性があります。特に責任感が強い人がなりやすく、それゆえに燃え尽き症候群になってしまった時も、人に迷惑をかけないことや、防衛本能で守りながらもどうにか仕事をやり遂げようとする人も多くいます。

周りの人が燃え尽き症候群の傾向を見せていたり、自分が消耗している気がしたら早めに気づいて対処できるように、しっかりと症状について理解することが大事です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です